協働学習Q&A
協働学習に関して寄せられる質問にお答えしていきます

Q4.協働学習では、グルーピングに相当な時間がかかってしまいます。グルーピングにかかる時間を短縮するにはどうしたら良いのでしょうか。

 グルーピングに時間がかかる原因にはいくつかの要素があります。
例えば、
@子ども達がグループに分かれる活動に不慣れである
A授業設計の中で、グルーピングに必要な時間を十分に想定していない
B教師自身がグルーピングに慣れていない
Cグルーピングの目的や必要性を学習者が理解していない
など、様々な原因が考えられます。
 
 グループ学習・ティーム学習の成立は、学習者が教師の授業設計に対して対応できる能力と関係しています。個とグループを何度も行き来する様な複雑な学習の流れでも、まったく迷わない子ども達もいますが、これは協働的な学習に習熟しているためです。従って、これまでグループ活動を体験したことがない子ども達が、急にグループ活動を要求されても対応できないことが多いのです(だから、協働的な能力を育てる必要があるのです)。グループを形成する能力を伸ばせば、グルーピングに要する時間も短縮できることになります。
 
 また、子ども達がグループで活動する必要性を理解していない場合にも、グルーピングに時間がかかったり、結成されたグループが活動を始めてから活動の狙いの食い違いに気がつき、グループを再編成しなければならない状態に陥ったりすることがあります。
@グループ活動に対する習熟を高めるために低学年から協働的な活動を学ばせる
A子どもの協働的な活動能力に見合った授業設計を行う
Bグループ活動をする意味やねらいを子ども達が持てる様にする
Cグループに分かれやすい様に、机間指導をしながら色付箋等を使って事前に概ねのグループ分けをする
D場合によってはモジュラー・スケジュールの導入などで、活動に必要な時間を連続で確保する
Eグルーピングの技能やスキルを教える場面を設けたり、教師がグループ分けをマネジメントする必要もある

など、教師の柔軟な対応と子ども達の学習体験の積み重ねが求められます。
グルーピングを短い時間で行うには、教師の指導力と子どもの協働的な能力という二つの要素を高めていくことが不可欠ですね。
Q.3協働学習を行おうとしても、子どもの性格や学力レベルがまちまちで、うまく行かないのではないかと思っています。子どものばらつきが多い場合でも、協働学習は可能なのでしょうか。

 子どもの学力や性格がまちまちではない公立小学校というのは、どの程度存在するのでしょうか。もし、その様な学校が存在するのであれば、教師にとっては教育がしやすい環境なのかもしれません。きめ細かく個に応じなくても、“なんとなく平均的な授業を一斉指導で行えば学習が成立しそう”な気もします。

 しかし、似た様な学力レベルの児童集団であっても、教科によって得手不得手があったり、同じ教科であっても、子どもによって考え方に違いがあるのではないでしょうか。「等質集団」を想像したり、仮定したりすることは簡単です。しかし、実際にはそうした等質集団は存在しないと考えた方が現実的でしょう。むしろ、子ども個々に差があるからこそ、助け合いや学び合いが可能となり、友達の意見や考え方を真似たり、批判・判断しながら互恵的に学ぶことができるのです。
 
実際に子ども達が生きていく社会でも、等質集団は殆ど存在しません。個性や能力、あるいは性別や国籍や経験が違う人々を避けて生きることは不可能です。

@等質集団を最上と考える“均一思想”はナンセンスである
Aマンツーマン指導(少人数)だけでは、学び合いや、考え合い、他者との意見調整を学ぶことができない。マンツーマン指導では、“指導する教師と受動的に教わる子ども” という、学びの主従関係が固定しやすい。
B実際の社会では等質集団は存在せず、他者と良好な関係を創造できる能力が必要である

 
 という現状を考えると、教師が個に応じるだけでなく、「自分の周囲に現れた多様な個に応じられる力」を子どもに育てて行く必要があります。 子ども同士に差があるから協働的な学習ができないというのではなく、差を活用した指導が必要になってきていると言えるでしょう。子どもを関わらせながら学ばせる指導は、一朝一夕で身に付く訳ではありません。だからこそ、日常から実践と研修を通して、学んで行く必要があるのでしょう。
 
独学(独りでも学べる)
共学(誰かと共に学べる) 
協学(誰とでも学べる


 という、三つの「学べる力」を育てて行きたいものですね。

Q2.「競争」と「協働」ではどちらの指導効果が高いでしょうか

 「競争」と「協働」のどちらが優れた指導法なのでしょうか。そもそも、「競争」と「協働」は対立する考え方なのでしょうか。
 対立、相反という関係ではなく、
@一人ではなかなか現れない現象が、人と人の間では発生しやすい
Aその効果を学習に利用する

という視点から捉えて行くことが大切だと思われます。

  例えば、ライバルの出現で意欲が出る、ティーム対抗の学習によってティーム内の創造性が高まる、クラス全員が協力できた実感によって親和的一体感を得る、友達の意見と自分の考えを比べることで自分の意見が確かになる。こうした、間主観性を活かした学びという点では、競争も協働も同じだと言えるでしょう。

 人と人の間で起きる現象は、競争的な側面が強い場面もあれば、協働的な側面が前面に出ることもあります。「競い合いを用いて意欲を高めよう」「仲間と協力する価値やよさを学ばせよう」という違いは、教師のねらいや学習のねらいによって変化をするものです。但し、学びの文化・学級の風土の基本的な土壌は「協働」を基盤にすべきでしょう。
 血管が体のすみずみまで行き渡って酸素や栄養を運ぶ様に、“協働”が教育活動全体に行き渡ることで、温もりと生きる力の源を配給するのではないでしょうか。

  PISAの調査で、「集団への帰属意識が高い子どもは学力が高い」というデータがあります。真剣に競ったり、自分の意見が堂々と言えたりするのは、「基本的に自分がこの集団には受け入れられている」と子どもが感じているからですね。安心して学んだり活動できる環境こそが、子どもが力を発揮しやすい環境だといえるでしょう。集団の文化は協働に根を下ろし、学習活動では競い合ったり助けあったり、多様な活動を通して、子どもは成長していく筈です。特定の場面での指導効果だけでなく、広い視野から協働や競争を捉えていく必要がありそうですね。
Q1.協働学習は他の学習と比べて、どこが新しいのですか

 これは協働学習に取り組もうとする学校から、しばしば聞かれる質問です。では、少人数指導や個別指導のどこが新しいのでしょうか。私塾では少人数や個別指導は当たり前の様に行われていますね。公立の学校では一斉指導で学習することが多かったために、少人数指導が目新しく見えるだけなのかもしれません。
 
 教育実践の価値は「新しいか古いか」ではなく、教育の本質に迫っているかどうかによって決まるものです。多様な個性の子ども達が集う公立学校にとって、協働学習は取り組む価値が高い学習だと言えるでしょう。私塾等では、個性や能力が異なる子ども同士がティームで学んだり、教えあったりしながら学ぶ機会が少ないのではないでしょうか。しかし、実際の社会では、多様な能力、多様な個性、多様な経歴の人々と、仕事や家庭のことについて考え合う力が必要になりますね。
 
 また、教師が子どもの個に応じた指導をすることも大切でしょうが、子どもが他の個に応じられる能力を育てることも大切です。他人と関わり合いながら頭を働かす能力を育てるには、協働学習が不可欠だと言えるでしょう。

@多様な子どもが集う公教育で取り組む価値がある
Aグループ学習は指導形態としてグループを捉える傾向が強い。しかし、協働学習では考え合う、伝え合う、分かり合うという「学習の文化=教育の場の社会化」の実現を目指す教育スタンスとして、協働を捉える
B人と人の間で、知識を使い合い、自他を活かし合う、人間力豊かな知性が育つ
C友達と表現を交換したり、考えを確かめ合うことで、知識の定着確かになり活用力が伸びる
D協調的課題解決過程における学習の効果や成果が、認知心理学を中心とした新たな研究で明らかになってきている

 
 上記の様に、「教育の価値」「効果的な指導法として」「新たな成果の発見」などから、協働的な学習に取り組む価値が高くなっていると言えるでしょう。