下村文科相が指導要領の全面改定に向けて「アクティブ・ラーニング」の導入ついて、中教審に諮問するという(NHKニュース)。これまでの指導要領が教える知識中心に構成されていた。だが、今後はどの様に学ぶと=どの様な能力が育つのか、という能力ベースの指導要領全面改定されることになるだろう。

  これはこれまでの「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」や国研の報告書「教育課程の編成に関する基礎的研究」の内容から十分に予測できたことだ。

  世界の教育が、知識中心から能力やより汎用性ある文化的実践力の育成に向かう中で、いつまでも知識の基礎基本の習得だけにしがみついている訳にはいかないということだ。知識を子どもにインストールするという近視眼的な視野ではなく、使える形で身に付けさせる授業づくりが求められる様になる。このことは、筆者も12年以上前から指摘していた(協働学力などで)ことである。

 ところで、「アクティブ・ラーニング」とはどんな学習・授業を示す言葉なのだろか。中央の定義によれば、
 「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。 学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」≪新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて-生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ-(答申)≫中央教育 審議会「用語集」

 ということになる。

  ・教え方と育つ学力は連動している

 ごく簡単に言えば、教え方を変えることで、学びの成果を変えようとすることだと考えてよい。一方的な講義形式で身に付く学力と、グループ学習で身に付く学力は異なるということだ。英語の単語や文法を丸暗記すれば、筆記テストにはある程度答えられる様になるかもしれない。しかし、実践的な対話の中で英語の対話ができる能力を育てる為には、対話の実技を通して学ぶ必要がある。学習の目標には「実技的要素」と「思弁的要素」がある。自動車の教習所でいえば、実技と学科がこの関係にあたる。
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●子ども達の活動(話す、聞く、協働する)が重視される
●子どもと子どもを関わらせる、社会的・間接的指導力が必要になる
●上に関連して、授業中の子ども洞察力、観察力、分析力が一層必要になる
●学習内容だけでなく、活動する子どもの個性や、育てる能力に対する知見が必要になる

●教師自身が、アクティブ・ラーニングを実践・体験する必要がある
●評価に関しては、測れる部分に縛られず、学ぶ力の質的向上を視野に入れる必要がある
●ジグソー、小集団、ディベート、協働学習などのデザインや計画ができる必要がある
●集団をマネジメントする組織構成・調整能力が必要になる
●より質の高いコミュニケーション能力(短時間で学修者を理解や納得に導く)が必要になる
●複数の人数や解決に一定の時間が必要となる様な、課題解決学習の課題・教材の構想力が必要になる

という様なことがアクティブ・ラーニングの実践課題となるであろう。


 学ばせ方が変われば、教師に求めれる指導技能も変化をする。先ほどの、教習所に置き換えて考えてみよう。学科の学習では、教師が一方的に学習情報を講義し、模擬テストでチェックするだけでもある程度授業が成り立つ。免許更新の時の安全講習も同じだ。生徒は受け身(パッシブ)であり、点数さえ取れれば寝ていてもさほど問題はない。
  
 一方、実技の方はそうはいかない。教師も学習者も学習対象とアクティブに関わり、状況や課題に対応して行かねばならない。教師の方は対人的実践力、社会的指導性、その場に応じた柔軟な指導が求められることになる。教師の一方的説明や解説だけでは、学習者の実技的能力に働きかけることが難しい。学習者の能力に働きかけるからこそ、学び手がアクティブになるのだ。
 
 また、個々の学習者に関わる働きかけ能力だけでなく、子どもと子どもが働きかけ合うことを促す≪協導型指導技能≫(協力に導く)も必須になるだろう。 (つづく)